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登録文化財の宿/奥伊豆・大沢温泉ホテルを訪ねて・・・。時代を感じる! [温泉巡浴]

奥伊豆・大沢温泉ホテルを訪ねて・・・。

 2,007年8月22日、30年前長女が生まれてすぐに訪ねた宿が大沢温泉ホテルだった。

竹取の棟から見下ろした全景

 観光バスの乗務員に「個性的な宿」と教えていただいた宿だった。私の温泉巡浴27湯目の宿。平家の落人が源氏の追っ手から逃れてという温泉地はよくあったが、こちらは武田勝頼の重臣だった依田家一党が甲州田野で武田家の終焉を前に、伊豆半島の奥へ奥へと逃げた場所が松崎の東へ入った長九郎岳山麓だった。仕事柄これまで10回ほどは宿泊しているが、長女が嫁ぎ、子どもが5才と2才になった今、一緒に同じ宿へ泊まるのは、とても感慨深い。
前日は土肥温泉に宿泊したので、土肥松原公園の花時計を見て足湯に浸かった。南下して堂ヶ島への途中にある「愛の鐘響く」恋人岬に立ち寄った。炎天下の岬への歩きは、つらいものだったが、緑豊な木陰のおかげで、何とか無事戻った。

海を見て「好き」と言った!のキャッチコピー通り、恋人たちの群れが途切れなかった。駿河湾の奥に富士山は見られなかったが、愛の鐘などのモニュメントは絶好のシャッターチャンスを提供してくれた。堂ヶ島の遊覧船は波が高く、今日も欠航だった。松崎から西へ桜並木の那珂川沿いに車で15分も走ったところが大沢温泉だ。

 大沢温泉は天目山の戦いで織田・徳川の連合軍に敗れ、奥伊豆に落ち延びて約400年。この地方の豪族、名主の地位を得て、材木・炭焼業、絹製糸業の豪商などで代を重ねた。明治時代の殖産興業時代も敷地内に県下最初の製糸工場を建てるなど地方のリーダーとして名をはせた。群馬県の旧官営製糸工場が世界文化遺産に登録されたが、松崎から6人の工女を派遣し技術者を養成し世界に「松崎シルク」の名をとどろかせた。時代の要請に真っ先に応える動きをしていた、時代の先を読むリーダー、特に依田家十一代佐二平は、後に弟・依田勉三を指導者とする北海道帯広開拓の結社「晩成社」を後援した。私は北海道北見市出身で、祖父の時代に福島市から北海道へ開拓移住した子孫だったので、30年前にこの歴史を知った時は、壮大なロマンを感じたものだった。それから10回ほど個人的にまた団体客を引き連れて訪ねたが、いつ来てもかの時代のロマンを感じさせ、時代の流れは悠々と繋がっているんだなと感じさせてくれた。

30年前、男子大浴場と思っていた大浴場に入浴していると、女性が入ってきて、あわてて「こちらは男子浴場ですよ」というと其の女性は「いえ、混浴です」と言われたことがあった。そういえば暖簾は、ただ「湯」と書かれていて、女子大浴場は「女湯」と書かれていた。

今、女子大浴場は野天風呂が追加されたが、当時は小さな湯船ひとつだった。

湯船が二つあり、広い豪華な総檜風呂に入浴してみたいと思うのは当然だった。今は当日と翌日の浴場を男女交代で利用できる。

当時は露天風呂も無く、那珂川沿い上流に500mも上ったところに藤田観光が経営していた露天風呂に入浴料を支払って入浴したものだ。

途中に依田佐二平翁の石像がたっていた。今回、しばらくぶりに石造と露天風呂をみに出かけた。石造は簡素な造りで写実的ではなかった。

30年前、この石像から、依田勉三や晩成社の名が芋ずる式に出て、自分史に結び着くきっかけとなったのである。

3年ほど前に竹取の間の屋上に、総檜造りの展望露天風呂が完成した。

季節により加温はしているが、源泉掛け流しの湯で、肌に優しくすばらしい眺望の露天風呂である。330年は経つといわれる母屋、土蔵、橘の間、長者の間が平成11年3月に登録文化財に指定された。

土蔵の2階の「天保の間」はかつて黒玉石敷きの和式トイレでバスは無かったが、今は1階に檜造りのお風呂ができ、トイレも洋式となった。ただ、残念なのは、お部屋のちょうな造りの太い梁が修理されたか、今風のカンナかけの柱に変わってしまっていた。

 2003年12月24日に依田家出身の依田勉三と北海道帯広開拓の結社「晩成社」を描いた映画「新しい風 若き日の依田勉三」が上映された。依田勉三役は北村一輝、兄の佐二平役は古谷一行が演じた。明治14年(1881年)に勉三が初めて北海道へ渡り、酷寒の地での開拓の様子をぜひ多くの人に見ていただきたい。古谷一行氏はたまたまこの宿の常連客だったそうだ。

大沢温泉ホテルhttp://www.a-spa.co.jp/spa/osawa-hotel/index.html
エッセイ「温泉夜話」 http://www.a-spa.co.jp/yawa/index.htm
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温泉巡浴紀行http://www.a-spa.co.jp/junyoku/index.html
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