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温泉夜話 昭和11年発行の「満州温泉案内」のはなし [海外のはなし]

温泉夜話 昭和11年発行の「満州温泉案内」のはなし

昭和11年発行の「満州温泉案内」
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ネット古書店を検索して、魚山堂書店から昭和11年(1936年)発行、南満州鉄道刊の冊子「満州温泉案内」を見つけ、八千円で購入した。南満州鉄道は、明治39年(1906年)から第二次世界大戦の昭和20年(1945年)まで存在した。満州国は1932年2月に関東軍が満州全土を占領、同3月1日に満州国が成立した。満州鉄道沿線にある行政、商業施設拡大、整備を急速に推進する。昭和12年(1937年)日本政府は満州移民推進を決定し、満州国の日本人は1936年の19万7千人から1942年の115万に急速に増えていく。
1920、30年代は、海外への観光旅行が本格的に始まった時代。第一次世界大戦後、交通機関や宿泊施設が発達し、気軽に海外旅行が楽しめるようになる。特に文学者、画家などの芸術家が欧米へ渡航し、紀行文学、ルポツタージュが花開いた。「三等旅行記」を著した林芙美子は1931年、満州~シベリア鉄道~欧州・パリへ行くのに14日かかった。

満州鉄道の乗客数は、明治40年(1907年)は約150万人、昭和8年(1933年)は約1,000万人。1934年には大連から新京官(約700㎞)を特急アジア号は8時間半で走った。
満州国の代表的な熊岳城温泉、湯崗子温泉、五龍背温泉の三か所は、一部満州人に利用されているに過ぎなかったが、日本人仕様に開発し、国力強化と国民保養の問題を温泉活用に結び付ける一助として紹介している。

冊子は縦17.5×横19㎝で12頁の装丁となる。熊岳城温泉は、「温泉場は、駅の東南24町のところ。いで湯湧く、熊岳河のほとり、自然と人工の階調美をたくみに織り込んで、澄んだ空気と、湯煙に包まれて温泉情緒ゆたかに漂ふところ、民衆的温泉場として熊岳城温泉は、砂湯と共に、あまりにも有名である」「熊岳河野の河原を掘れば、滾々尽きぬ温泉が湧き、青天井のもとで、砂に埋もれて入浴などする野趣は、文化施設にあまりになれ過ぎている近代人のこの上なく愉しむ処で、冬も尚この砂湯の快を味わい得られるよう、モダンな硝子張りイタリー式砂場浴場(一名軍艦風呂)の設備がある」

湯崗子温泉は、「湯崗子駅の東北4丁のところ、詩歌にその名を謳われている名峰千山を遠景に、閑雅な公園の樹間に点在する建物が温泉場である」「昭和7年3月満州国の誕生に当たり、新国家の推戴すべき元首溥儀執政並びに夫人ら一行が出盧華々しく歴史的の新京入りをなすの途、新都に於ける迎接の準備を待たれるため、一日休息された処として日満国人の記憶に今尚新なるものがある」「北満地方の露西亜人間に、此処の泥風呂の医治的効果が宣伝されて行って、その神の如き医薬的効果が知れ渡って行くとともに、北満各地をはじめ遠く天津、青島、上海あたりよりの外人浴客が殺到するに至った」
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五龍背温泉は「五龍背駅から東南方3町のところ、水清く沙河の流れに沿って、小丘を背にして木の間がくれに、乳色の湯煙に仄かに包まれて、赤い屋根をのぞかせている建物が温泉場である」「この温泉は、既に古く、唐の太宗高句麗親征の時に戦塵を洗われたと伝えられるが、日本人間には日清戦役の際、第五師団第11聯隊の兵たん部の発見によって一般んに知られ、日露役には療養所を置いて傷病兵を休養せしめた。戦後、当時従軍の一邦人によって旅館が経営せられ、大正7年満鉄が之を引き継ぎ今日に至っている」

2011年9月16日~19日に中国東北部・旧満州の温泉巡りに取材に行き、熊岳城(ゆうがくじょう)温泉、湯崗子(とうこうし)温泉に入浴した。特に湯崗子温泉では、満州国皇帝溥儀が入浴した湯船にも入浴することができた。
温泉マニアの巡浴紀行:熊岳城(ゆうがくじょう)温泉
http://hide-tabi.blog.so-net.ne.jp/2011-09-28
湯崗子(とうこうし)温泉
http://hide-tabi.blog.so-net.ne.jp/2011-10-05
温泉夜話中国東北部(旧満州)温泉めぐりと高熱入院のはなし
http://hide-tabi.blog.so-net.ne.jp/archive/20111022

参考資料:日本温泉案内 西部編 大日本雄弁会講談社編 昭和5年刊
     温泉案内              鉄道省 昭和6年刊
     温泉知識           丸善株式会社 昭和13年刊

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