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温泉夜話 イザベラ・バード著「日本奥地紀行」と温泉のはなし [温泉マニア]

温泉夜話 イザベラ・バード著「日本奥地紀行」と温泉のはなし
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イザベラ・バード

2013年10月に東洋文庫 イザベラ・バード著「日本奥地紀行」の新版が出たのを知り、彼女が訪れたルート上の温泉について読み直してみた。英国人イザベラ・バードは、1878年(明治11年)5月21日に18日間かかりシテイ・オブ・トキオ号で日本を訪れた。江戸東京から浅草、日光、会津、津川から船で新潟へ。中条、米沢、上山、山形、新庄、湯沢、秋田、黒石、青森から船で函館へ。函館から船で森、室蘭、白老、平取、長万部、函館から、船で横浜、東京へ。
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イザベラ・バード

 約7ヶ月にわたる紀行文から、温泉地の記述に限定して、記録を温泉マニアの私なりに精査してみた。彼女はこの時代の「外国人に」よく知られたところを完全に外れた(ヨーロッパ人が踏破したことのない)ルートを選んで組んだもので、特に蝦夷(北海道)の先住民アイヌの記述に力を注いでいる。
温泉地の記述があるのは、日光の後の「家のほとんどが『宿屋である日光湯元温泉』」、宿は吉見屋に宿泊(6/22)。吉見屋は、明治時代末に廃業し、宿の主人のことを伝えた石碑が交番の隣にあるという。
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茶屋(宿)の吉見屋の女中の絵

 その後日光に戻り、藤原、高原(6/25)へ。鬼怒川・川治温泉観光協会の方によると「藤原から鶏頂山の脇を抜けて高原へ抜けたらし」く、「川沿いに皮膚病に苦しむ人が大勢やってくる温泉が湧いている」のは、川治温泉という。米沢の先の硫黄泉の温泉町である「赤湯」に着いた。「できればここに泊まりたかった」が、とても騒々しいので「上山」の宿屋・会津屋―広い庭がある蔵(の部屋)に泊まった(7/14)。「蔵の庭には温泉を引いた湯壺があり、私はここにゆったりとつかった」。山形を過ぎて、天童に泊まる予定だったが、宿の部屋がすべて蚕でふさがっていたので通過。温泉地に宿泊したのは、日光湯元温泉と上山温泉、この先に行く黒石温泉郷の温湯温泉のみで、彼女が宿泊した温泉地で温泉に入浴したのは、上山温泉だけだった。

 その後、青森の「集落はほとんどが茶屋と宿や(客室)となって」いる黒石温泉郷の温湯温泉(8/6)の共同浴場(外湯)に興味をひかれる。「四つの別々の建物の両側の建物には女性と子供が湯船の使っており、真ん中の二つの建物では、混浴になっていた。だが、湯槽の回りを廻る木の縁に座っている人々は、男性と女性がその両脇に別々に座っていた」「・・・日本政府は混浴の禁止に躍起になって」いて「このような僻遠の地までこの改革が到達するには時間がかかるだろうが、遅かれ早かれやってくるとは思われる」「公衆浴場は日本の数ある特質のひとつである」
最後は蝦夷にわたり、森から幌別、白老に行く途中、「登別川に至」り「その水には温泉の硫黄が強く含まれていた」ことを発見するが、登別温泉に立ち寄った記述はない。白老(8/29)に着くと、アイヌ人の案内を付けて樽前川(白老川)源流調査に出かけ、温泉にも出会う。「一つの割れ目に硫黄の見事な針状結晶が線状にびっしりと付着していたが、ちょっと触ると壊れてしまった。また少し下の方には温泉が二つ出ており、その縁には硫黄分がたまり、ガスの泡が吹いていた。そのガスは強烈なニンニク臭からすると硫化水素だと思われる」・・・「とても高温で」「また卵をハンカチで包み、棒につるして熱湯の中に入れて見ると、八分半で硬くゆで上がってしまった」
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道中のほとんどは人力車に乗って
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時には馬にも乗った

 温泉地の様子を詳しく記述しているところは、湯治場の様子を描いた「日光湯元」や「上山温泉」「温湯温泉」である。いかに病気を治すために大勢の人々が湯治に通っているか、湯治の仕方や集落の中の共同浴場の位置についてよく理解できる。現代の湯治の歴史研究に貴重な資料となっていること、イザベラ・バードの分野を問わないたぐいまれな博識、勇気と好奇心、研究心に改めて脱帽する。イザベラ・バードの日本奥地紀行を成功に導いたのは、同行した通訳の伊藤、「通訳の弁勲」と称された伊藤鶴吉(1858年1月30日生~1913年1月6日没)の有能な能力に負うところが多い。

参考:上山郷土資料:「春秋上山・第二号(1931年)、白神龍也氏のエッセイ(2004年)
   各地の温泉観光協会など。

☆高野山麓の天然水「月のしずく」http://www.a-spa.co.jp/onsen-shop/
☆旅と温泉の相談室 http://www.a-spa.co.jp/
☆旧街道を歩く旅 http://www.a-spa.co.jp/tabi/nikko/index.html
☆スペイン「聖地サンティアゴ巡礼」の旅 初日サン・ジャン・ピエ・ド・ポーから
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cocoa051

イザベラ・バードさんは貴重な見聞記をいっぱい残していますね。
彼女は日本だけじゃなく、朝鮮半島、それも李朝末期の朝鮮紀行は貴重そのものですね。
by cocoa051 (2014-03-27 18:29) 

般若坊

日本の100年以上昔の風物を知る、貴重なデッサンですね・・・大切に保管したいです。
しかし日本人は皆 貧しかったですけれど、堂々としていますね・・・
by 般若坊 (2014-03-27 21:07) 

あとりえSAKANA

ブログにお越し下さり、
また、nice!を
ありがとうございました!
臼杵が思い出深いところだったので
nice!させていただいたのです☆
(磨崖仏を家族で見に行きました。)
by あとりえSAKANA (2014-03-27 23:16) 

風来鶏

未だ外国人が珍しかった頃(殆どの日本人が、初めて遭遇する女性の西洋人だったのでは?!)、このような僻地まで彼女を導いたものは、彼女にとっても初めて観る異文化に対する好奇心だったのでしょうね(^^)
by 風来鶏 (2014-03-28 09:01) 

なつかえで

hide-mさん、初めまして。
ご訪問&nice!、ありがとうございます!

by なつかえで (2014-03-28 14:36) 

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