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現存する日本唯一の江戸建築の旅籠屋「大橋屋」に泊まり、江戸創業老舗グルメの旅 [旧街道を歩く]

現存する日本唯一の江戸建築の旅籠屋「大橋屋」に泊まり、江戸創業老舗グルメの旅
2012年9月29日~10月01日

 私の旧東海道歩きで2000年8月27日に赤坂宿の「大橋屋」を訪ねて十九代当主に話を伺ったことがある。一度は泊まってみたいと思い、12年目にして思いがかなった。
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現存する日本唯一の江戸建築の旅籠屋「大橋屋」
  
東京新宿西口からの夜行バスで23時40分に出発して、翌日9月30日(日)5時30分に豊橋駅前に到着。周辺を見回しても食事場所がないので、コンビニでおにぎりとお茶を購入して、御油(ごゆ)の900本が残る松並木街道を歩くことにした。名鉄御油で降りて、旧街道へ移動する。御油橋東を右折して橋を渡る。川沿いに彼岸花が咲き乱れ新名所になっているのか?街灯はしゃれたガラス箱に松の絵柄をデフォルメしたここならではのもの。
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御油橋東
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川原には彼岸花の群落が・・・

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街道沿いの街灯

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旧街道沿いの風情をおもわせる旧家造り

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御油(ごゆ)の900本が残る松並木街道

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 7時8分関川神社、御神木なのか大楠は幹周りが7・29m、高さ25・7mの樹齢約800年の古木。「夏農月御油より出でて赤坂や」の芭蕉句碑。本殿の左手前に「三面馬頭観音像」が珍しい。旧街道らしく旧家造り(花井家)、元酒屋なのか「藤屋酒店」の看板のある家屋(伊藤家)、「赤坂紅里」信号に「赤坂宿公園」ここには札場、昔の屋号表示版がある。右折すると名電赤坂駅。りっぱな旧商家造りの家が残っていて旧街道の風情を残す。
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関川神社

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芭蕉句碑

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馬頭観音

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古い商家

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「赤坂紅里」信号角にある「赤坂宿公園」

信号からすぐ先に創業慶安2年(1649年)、正徳6年(1716年)建築の旅籠屋「大橋屋」。威厳を保つがごとく大きな軒提灯を正面に掲げている。二階の両端に浮世絵の女絵に大橋屋の屋号を描く。享保18年(1733年)には83軒の旅籠があり、大橋屋は間口9間、奥行き23間の大旅籠に属していた。横から見ると大きさがよくわかる。宝永6年(1709年)隣の大火で類焼したときまで、南側に4部屋、奥に20部屋があり、合計27部屋で営業していた。安藤広重の「東海道五十三次赤坂図」と題した旅籠風景の中で描かれたソテツは、明治20年頃道路拡張の為、当旅籠からこの境内に移植されたのだという。
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赤坂宿の大橋屋

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大きな軒提灯を下げた大旅籠「大橋屋」

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街道側の壁に飾られる

 大橋屋の当主青木氏に聞くと、「中庭にあったソテツが金物をこえにして縁起が悪いといわれたので先々代の時に親しかった浄泉寺に頼んで移植したのだという。樹齢は約270年、高さ3m、幹周り4・6m。広重絵のアングルも女中部屋から中庭を描いたものだという。当主がいうには17代目は青木新左衛門と名乗り先祖は足利の家来で三河の武士だったという。赤坂の名の前は、近くに宮地山があったことから宮地の庄と名乗っていた。

翌日台風一過の浄泉寺散策をすると祖父江住職と檀家の人たちが境内の大銀杏から落下した銀杏の集荷と葉っぱの清掃をしていた。毎年60㎏くらいの収穫があるそうで「台風で落ちてしまったが、今年は小ぶりだ」という。私は、正法寺境内に大きな蘇鉄があったこと、大橋屋の中庭にあったという蘇鉄がなぜ道路拡張に支障があるのか疑問だと話を向けると「旅籠屋の清須屋(後に廃業)、村木屋(後に新城へ移転)にも蘇鉄があった。寺の境内に移植した蘇鉄は金を食うと参拝客はまちばりを刺していた」と話された。安藤広重は当時この赤坂宿が、80数軒の旅籠屋で賑わっていたこと、大蘇鉄がこの宿場にいくつかあったことを承知して「東海道五十三次赤坂図」を描いたのだろう。
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浄泉寺正面

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浄泉寺に移植されたという大蘇鉄

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台風で銀杏が飛ばされた後片付け

 一旦、名電赤坂駅から豊橋へ戻る。観光プラザで近くに天然の温泉がないかを訪ねると「本宮の湯」はバスの便がないのでシャトルバスが運行している「コロナワールド」がいいと勧めてくれた。丁度豊橋駅そばのグリーンホテル前から9時にでるというので急いでシャトルバスに乗車した。豊川を越して「コロナワールド」へ20分ほどで着く。2階へのエスカレーターに乗る入浴客に「天然の温泉ですか?」と聞くと違うといわれ絶句。シャトルバスの運転手に話すと「昔は温泉だったが、市へ使用料を支払わなければならず、採算が合わずにやめた。このときの温泉をためていた施設がこれだよ」とその施設を指さす。愕然とした。再びシャトルバスに乗って豊橋へ戻り、「本宮の湯」に電話で聞いたら豊川駅からコミニティバスが運行して20分でくることができるという。JR飯田線で豊川駅からシャトルバスで「本宮の湯」へ向う。「観光プラザ」の情報不足でキリキリ舞をさせられた。「本宮の湯」に着いたのが11時8分、出発便が11時30分、その後の便が14時30分だからと何とか間に合わせた。本当にカラスの行水だった。入浴料は2階フロアの自動販売機で購入し、浴室へ。大浴場、木霊の湯、薬湯、露天風呂、石湯、サウナなど。泉質はナトリウム塩化物泉でつるつる感があるが循環式、塩素殺菌なので塩素臭がある。
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豊川稲荷で有名で流石に駅前に・・・

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「本宮の湯」

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「本宮の湯」のロビー

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「本宮の湯」の露天風呂(パンフレットから)

 JR豊川駅乗り換えで豊橋へ旧東海道沿いにある文政年間(1804~1817年)創業(文化4年の記録に「菊宗」の名が出てくるという)「きく宗」の菜めし田楽定食を食べる。自家製豆腐で作った伝家の田楽、菜飯、椎茸・麩・三つ葉などが入ったお吸い物に香の物。田楽を菜飯の上に載せて食べると味が混在して美味である。12年前に旧道を歩いたときに来ているが、食わず嫌いの感があったようだ。帰り際にお孫さんと将棋を指していた6代目のご主人太田勝夫氏に「昔と同じ味ですか?」と聞くと「自分が教えられた通りの作り方できたから・・・。そのはずですが、実際にはわからない」とおっしゃる。昔から豊橋は菜めし田楽で有名で、専門の店が7~8軒あったという。昔は「菊宗」と名乗っていたが、お酒の名前と間違えられるので「きく宗」に変えたという。台風が接近していて、雨は断続的に降り特に風が強く、早速折り畳み傘の骨を折ってしまった。
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店内

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菜めし田楽定食を食す

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楽を作る様子(パンフレットから)

 豊橋駅ではしきりに「台風の影響で運休になるかも知れません」と放送される。間引き運転で名電赤坂駅に着いたのは16時ころ。時々風雨が強い時間帯があったが、間隙をついて骨の折れた傘を体に押しつけながらなんとか大橋屋にたどり着いた。朝には吊り下げられていた軒提灯は下ろされていた。旧東海道赤坂宿の大橋屋の創業は、慶安2年(1649年)で安藤広重が描く「東海道五十三次赤坂」は、大橋屋を描いたものという。庭の大蘇鉄は、浄泉寺の境内にあった大蘇鉄がそのモデルだといわれる。

 十九代当主青木一洋氏によると東名高速道路が造られた昭和39年以前はこの辺りはまだ商家造りの家が連なり昔の景観が残っていたそうだ。国道1号線が引かれる昭和25年頃は、砂利道で、道路幅も今の半分で、当時「こんな広い道路を造ってどうするんだ。」と思っていた。路上でよく野球をして遊んだものだ、と語ってくれた。「大橋屋」の街道側の建物は、昔のまま保存され、外観、内部,調度品など江戸時代そのままに現役で使われている。太い梁に高い天井、広い土間と帳場、長火鉢、2階の3間は障子戸でつながった客間。特に障子戸が部屋の両側から見られることを前提にした凝ったもの。建築に相当お金をかけた造りだ。母屋の街道側半分は有形文化財指定となる。有形文化財指定といっても修理などの規制が厳しいわりに修理代の補助は、修理代の2割を負担するだけで、家屋が繋がっている部分の修理代は一切補助がないという。
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大橋屋の玄関口

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黒光りした母屋の天井、梁など

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二階へ登る階段

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旧街道側の障子戸で繋がった三間

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火鉢が配置され、美しい・・・

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障子戸は粋な職人技で作られた・・・

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二階から見下ろした

 私は弥次さん喜多さんが寝泊りした街道側の部屋に寝泊りをしたかったが、奥の二階の新しい部屋になった。1階の檜桶風呂のお風呂へ入浴後、17時過ぎには夕食の連絡が・・・。台風でどこにもいけないのでまあいいか。夕食膳は1階の新しい造りの和室でいただく。むかごとサザエの塩焼き、イチジクの海苔巻き、お造りは甘エビ、鯛など、長芋の味噌和え、椎茸そば、カニ、うど・胡瓜などの酢の物、鮎の塩焼きと煮帆立、デザートはぶどう・オレンジ・スイカと豪華なもの。地酒に元治元年(1864年9創業の関谷醸造㈱の「蓬莱泉 可(べし)」の冷酒を戴いた。朝食は玉子豆腐、鱒の甘露煮、焼き海苔、パイナップルとブルーベリー&サラダ、わかめ酢の物など。
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奥の二階の間

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檜の桶風呂

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夕食膳の数々・・・

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朝食膳

 帰途、JR袋井駅で降りて、江戸時代創業の和菓子屋「五太夫きくや」に立ち寄る。2000年12月24日に旧東海道歩きで袋井宿を通過したことがある。天正12年(1584年)創業の老舗でかつては城下町の中心地だった森町、江戸から61番目の木原一里塚の西側にあったが明治22年(1889年)に駅前に移転した。昔ながらの菓子「梅花餅」「ふりわけみそかすてら」がなく、「北の丸」、幕末スヰーツ「梅の花」を購入した。十四代目当主鈴木利夫氏は25才のときにフランスに菓子修行留学後、家業を継いだ。正岡子規は袋井で詠んだ句「冬枯れの中に家居や村一つ」から代表的な和菓子の名に「村一つ」とつけた。駅前に正岡子規とその句のレリーフが建てられている。
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天正12年(1584年)創業の老舗和菓子屋「五太夫きくや」

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店内

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和菓子「北の丸」など

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駅前にある正岡子規の記念碑

エッセイ「温泉夜話」 http://www.a-spa.co.jp/yawa/index.htm

温泉巡浴紀行http://www.a-spa.co.jp/junyoku/index.html

旧街道をあるく旅 http://aaspa.web.fc2.com/index-tabi.html


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村沢青子(TBS)

突然すみません。TBSテレビで番組制作しております村沢と申します。
ブログに掲載されている東海道「大橋屋」さんの、お風呂やお食事の
お写真、番組で使わせていただけませんでしょうか。
ご許可いただければ幸いです。当方メールは
aoko@best.tbs.co.jpです。
by 村沢青子(TBS) (2015-03-04 20:31) 

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