温泉夜話 行政による温泉の循環・塩素消毒義務付の強要は不当！ [温泉マニア]
最近、温泉地での宿泊施設で浴室に入ると塩素臭が気になることが多く、温泉好きな私にとっては、本物の温泉・源泉の湯船に浸かりたいと強く思うこの頃である。 ２００５年４月の実家の法事に北海道に行く機会があり、養老牛温泉、塩別つるつる温泉、
取材紀行http://www.a-spa.co.jp/totugeki/totugeki-turuturu.htm
三香温泉、野付温泉、中標津温泉に入浴してきたが、いずれも塩素消毒はなく、源泉掛け流しで感激して帰京した。
２００２年に宮崎県日向市の「日向サンパーク温泉・お舟出の湯」で７名がレジオネラ菌で死亡した事件以来、レジオネラ菌対策として、殺菌のための塩素系消毒剤を投入する行政指導が全国の保健所によって強行されている。湯量が豊富で高温の温泉地でも、源泉の掛け流し・毎日の清掃をしている温泉施設にも一律に強要している。塩素投入がレジオネラ菌対策として効果があるかは議論のあるところで、むしろ塩素投入による肌や体への弊害も指摘されている。
２００５年１月、くまざさ出版社から出された松田忠徳・阿岸佑幸・大河内正一・甘露寺泰雄氏ら温泉研究の専門家の著書「温泉の未来」を読む機会があった。この中で「浴槽水への塩素消毒に関する条例の全国一覧」が掲載されている。これは都道府県の担当者（おもに生活衛生課）への聞き取り調査結果である。これによると、源泉掛け流しを含めて塩素消毒を義務付けている県は、宮城・茨城・愛知・京都・奈良・大阪・広島・香川・愛媛・高知・宮崎・長崎・鹿児島・沖縄の１４県。原則的に義務付けだが、個別的状況により（源泉掛け流しに条件をつけたり、循環浴槽は義務付けとか）例外もある県が、山形・栃木・千葉・東京・神奈川・静岡・富山・滋賀・和歌山・大分・熊本の１１県となっている。
つまり、昔ながらの源泉掛け流しで換水・清掃の頻度にかかわり無く塩素消毒を義務付ける又は指導する県が１７県、同じく循環浴槽の場合は、同じく２５県に及んでいる。
２００５年９月２日～４日にかけて山形県尾花沢市で第５回温泉学会が行われた折に、新庄周辺の温泉めぐりをし、肘折温泉と赤倉温泉の取材をしてきた。肘折温泉全体
肘折温泉 若松屋村井六助 http://www.a-spa.co.jp/spa/wakamutuya/
と赤倉温泉のあべ旅館
天然岩風呂の宿 あべ旅館 http://www.a-spa.co.jp/spa/akakura/
岩風呂の底からぷくぷく湧き出る「足元湯」
は、源泉掛け流しで塩素消毒はしていなかった。阿部旅館のオーナーは、「昔ながらの源泉を守りたい、塩素消毒なんてとんでもない、塩素を投入したのでは、温泉で無くなる」と強い口調で従来通り、「毎日清掃することでレジオネラ菌対策をやっています」と語ってくれた。このように塩素消毒の義務付けを指導されている県下の温泉地でも施設側の強い本物の温泉を守る姿勢があれば、本来の温泉を壊してしまうような強制策を拒否できていることを示している例は全国にいくつもあるようだ。
問題は施設側に塩素消毒義務化が本来の温泉にとって良くないと解かっていながら、施設運営上、循環システムにして毎日清掃をしなくてもよい効率的な循環システムと塩素消毒のセットをあえて受け入れているように思えてならない。もし万が一、レジオネラ菌が原因で事故が起きたときにも、「行政の指導通り、塩素消毒をしていましたが・・・」という言い訳のために行政の言うがままにしていると思うのは、うがった見方だろうか。温泉施設を使用する消費者や療養者の肌や体に与える影響をもっと真剣に研究・対策を立てて欲しいと思う。
従来から私は温泉施設側に提案していることがある。浴室に必ず源泉の湯船を小さくとも良いから備えて欲しい、とくにサウナを完備しているところでは、サウナの前に水風呂が備えられているが、ほとんどが水道水の浴槽である。温度が低い源泉を持つ施設の場合、その源泉をそのまま使ったらどうか。温泉にこだわる人は、たとえ温度が低くとも源泉の浴槽があれば、その浴槽を利用する人があるだろう。消費者の選択肢をもっと広く作って欲しいと思う。(2005.9記事に加筆)
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