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花巻南温泉郷 深い立ち湯の一軒宿 鉛温泉藤三旅館 [療養・湯治の宿]

 2007年9月4日、奥の細道を歩いて、平泉まで行った時、花巻温泉郷鉛温泉「藤三旅館」に宿泊した。


1984年8月に入浴していたので、2回目の訪問になる。昭和31年、高村光太郎が「旅の手帳」に投稿した鉛温泉投宿の様子が面白い。「非常に大きな湯舟(白猿)が一軒別棟でできていて、いっぱいの人が入っている。その様を小高いところから見下ろせるが、まるで大根が干してあるように人間の像がずらりと並んで、それは壮観である。たいていの温泉は、引き湯だが、鉛はじかに湯が湧いている。湯の起こりの底の砂利を足でかき廻すとプクプクあぶくが出てきて身体中にくっついてピチンとはねるのも面白いが、大変薬効のある温泉といわれている。・・・」

鉛温泉は、花巻市の北西、花巻南温泉郷の奥から2番目の一軒宿、高倉山麓、豊沢川沿いにある宿である。昔から効能高い湯治宿で栄え、今でも旅館棟と自炊棟がある。旅館棟の木造3階建ての母屋は、昭和16年の建築の総欅造りで、3階建ての6畳間の28号室に宿泊した。


和室6畳・書院障子戸で仕切られた広縁付き、トイレなし、テレビ、鏡台、扇風機付。かつて、田宮虎彦が一ヶ月逗留し、「銀(しろがね)心中」を書いた部屋〔28号室〕も3階にあり、見せていただいた。

障子やガラス戸、欄間などその時代の職人の技を振るった建築物で、釘を使っていないのに驚く。黒光りした階段や踊り場、古きよき時代を感じる。

四つある源泉があり、5ヶ所の湯船(龍宮の湯、河鹿の湯、白糸の湯、桂の湯、白猿の湯)にそれぞれ配湯している。

「桂の湯」露天風呂

特に有名なのが白猿の湯で「立ち湯」として知られている。


「白猿の湯」宿のパンフレット写真提供

白猿の湯は、もともと岩の底から湧き出て、深さが1.25mあった。昔、湯量が減ったので、さらに岩盤を掘り下げ、一部コンクリで固められ、どこからか湯が湧き出ている。今は深いところだと1.5mはあり、子どもたちにはおぼれそうな深さだ。男女別々に入り口があるが、戸を開けると眼下に石造りの楕円形の湯船(2.5m×4.5m)と小さな湯船(直径1.2m)、更衣棚が見える。小さな湯船は源泉が異なる温い湯で、長い時間入るか、熱い湯と交互に入ると良い。通常は今でも混浴だが、夜の7時から8時が女性専用風呂となる。他の浴槽も翌日は入れ替わるので、全ての浴槽で入浴することができる。「龍宮の湯」は本館2階にある旅館部の部屋からは一番近い湯で、源泉が45度とあるが、とても熱くて入れず、湯掛けだけして諦めた。

「白猿の湯」は、約600年前藤井家の遠祖がきこりをしていた頃、岩窟から出てきた白猿が、木の根元から湧いている温泉で手足の傷を癒しているのを見つけたという由来がある。源泉は自噴する57度の単純泉で、効能は神経痛、リウマチ、関節炎、筋肉痛、腰痛、アトピーなどの皮膚病、胃腸病、婦人病など。自炊部もあるが、最近は自炊客が減ったと番頭の菊池和雄氏はいう。湯治客は農家が冬支度で仕事が無い農閑期の2月に多く、ほぼ満室になるという。自炊部屋は、なんと言っても安いので人気だ。南向きの和室6畳間は、1泊2食付で1人から3人用で4,245円(税・入湯料込)、

南向きの和室6畳


北向きの和室8畳

北向きの和室8畳は、ガス器具、冷蔵庫付き4,560円(税込)だが、冷蔵庫や暖房費は別途かかる。日当たりが良く常連客に人気の部屋だという。自炊棟には自炊室があり、自炊客はそこに食材を持ち込んで、調理をする。食器や鍋などは無料貸し出しをしている。布団・毛布・丹前・浴衣・バスタオル・テレビ・コタツなど何でも貸し出しをしているが、それらの料金と宿泊日数を計算して、自宅から持ってきたほうが徳かを判断するようだ。1ヶ月どころか7年間自炊室に泊まっていた人がいたという。夏季プラン(4月1日~11月30日〕として、1泊室料+布団代+浴衣付き+テレビ使用料+入湯料で2,880円、冬季プラン(12月1日~3月31日)で、1泊室料+布団代+浴衣付き+テレビ使用料+丹前+毛布+コタツ+入湯料で3,615円。昼食は600円より、定食は2,100円より受け付けている。
 白猿の湯に入浴した後、自炊棟の売店に行って話を聞いた。

日用品や食料品がそろっている。おばあさんがいて、「ウチの湯は全て源泉掛け流しで、いろんな病気が治ったというお礼の手紙が来ている。私はいつも湯に感謝しながら、湯に入るんだよとお客に言っているんだよ。信じるものは救われるんだから」と手紙を見せてくれる。私が「藤三旅館」の名の由来を聞いた時、「藤三(とうさん)旅館」かと思った」というと即座におばあさんは「縁起でもない、倒産(とうさん)だなんて!」としかられてしまった。番頭の菊池和雄氏に話すと「おばあちゃんは、社長のお母さんですよ。藤井家の「藤」と先代の誰かの名前の三をとったのだと思う」と話してくれた。とんだ冷や汗ものだった。

夕食膳は部屋でいただいた。

前菜に焼魚・蕨・栗・ふきのとう味噌、ジンギスカン鍋、煮物と炒めの帆立・サーモン・アスパラ、茶碗蒸し、お造りはぶり・甘海老・鮪、うなぎにわさび付き、かにと卵豆腐、南瓜などの天ぷら、いくら・とろろの酢の物、デザートにぶどう。こんな山奥なのに、海の幸が多いとは驚いた。朝食も部屋でいただく。鯖の塩焼き、ポテトサラダとキャベツ、ベーコンと卵の目玉焼き、ぜんまい・蒟蒻などの煮物、納豆に焼き海苔。1泊2食付で、8,130円(税・入湯料込)でこの料理は、できすぎか?たまに一泊には良いが、これが毎日ではいくらご馳走でも参ってしまうのでないか。自炊棟の人気も理解できる。

〒025-0252 岩手県花巻市鉛字中平75-1 
電話番号0198-25-2311 ファックス番号0198-25-2312
自炊棟の電話番号0198-25-2901

アクセス:電車;JR東北新幹線新花巻駅下車、鉛温泉まで約60分、無料シャトルバスあり。
     JR東北本線花巻駅下車、鉛温泉まで約30分、無料シャトルバスあり。
    :お車;東北自動車道花巻南インターより、約20分。
    :飛行機;花巻空港より約30分。
     
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